生前整理とは何のこと?遺品整理との違いとは
「生前整理」とは具体的に何のことなのかわからない、そもそも本当にするべきなの?という方も多いのではないでしょうか。
また、同じような言葉に「遺品整理」や「終活」などの言葉も存在しており、混同されているケースも多いのが実情です。
ここでは、「生前整理」とは何なのか、そして行う意味や目的まで触れ、人生を豊かに過ごしていただく機会になればと思います。
生前整理とは?
老前整理という言葉も同様の意味を持ちますが、最近では20代や30代といった若い世代の方も必要性を感じて、働き盛りの年齢でも始められている方も少しずつ増えてきていることから、あえて「生前整理とは」ということについて記載させていただきます。
亡くなられたときに、ご遺族である家族や大切な方が遺品を片付けたり、仕分けをする「遺品整理」という言葉があります。混同されがちですが、「生前整理」は自分自身で判断ができる元気なうちに、身辺の整理や片付けを進めておくものですので違いは明確です。
簡単にお伝えさせていただくと・・・
・生前整理・・・自分自身が判断して行うもの
・遺品整理・・・残された遺族が行うもの
上記の違いが存在しています。
誰でもいつかは死を迎えることは受け止めざるを得ない事実として誰でも受け入れていると思いますが、一方で、老いて亡くなることが亡くなる理由の1つに過ぎない事は稀有であると考えています。
ニュースを見れば、急な病気や交通事故や災害によって急に命を落とす方は全国でも多数いらっしゃいます。その可能性が自分自身もゼロはあり得ないということです。
自分がいつか亡くなるという避けられない事実を認識し、身の回りを整える機会や習慣を設けておくことに早過ぎるという事はないのではないでしょうか。
なぜ生前整理を行うのか?理由とタイミング
生前整理を行う目的は大きく3つあります。
1つ目の目的は、自身が亡くなり、残された家族が相続問題(遺産分割)などで揉めないようにするということです。
遺産分割の生前から整理を進めておくことで、「財産」と「気持ち」の整理を同時に行うことができます。
相続財産(土地や建物や現金や有価証券など)の一覧、財産目録を作成し、それらを誰に残すのか、形見にして欲しいのか等を遺言書やエンディングノートに記載しておくことで目的を果たす上での一助となります。
どのような財産があるのか財産目録を作成し、どうしてその内容の財産配分を考えたのか、その理由を残すことで、被相続人(相続財産を残して亡くなった方のこと)のご自身の意思を明確に家族や大切な人に伝えることができるメリットがあります。
ご自身がお亡くなりになった後、ご自身の残した財産や有価物などの遺産分割協議などで、望まない家族間のトラブルに発展させる危険性を最小限に抑えることは大切なことだと思います。
2つ目の目的は、家族の遺品整理の手間を削減するということです。
ご自身が家族の遺品整理を経験されている方は理解されていることではありますが、ご自身が亡くなられた後、自宅には多くの家財が残っていたり、貴重品(土地の権利書や有価証券、通帳や印鑑など)の保管場所もわからず、探し物と片付け、処分の手配、役所へ出向いての手続きなど、色々な作業、負担がご家族に発生します。
仮に、お子様たちが遠方に住んでいる状況で、配偶者と二人暮らしか、一人暮らしの場合を考えた時、ご自身がお亡くなりになった後、配偶者や遠く離れた場所で住んでいるお子様たちに時間はもちろんですが、体力や精神的にも大きなご負担を与えてしまいます。
特に、お住まいが賃貸住宅であった場合、管理会社からは速やかに立ち退きを要求されます。お子様が有給などを使い、遠方から駆け付け、家財の整理や貴重品の仕分け、処分まで行わなければならないことを想定した場合、事前に不要な物は整理、断捨離をしておくことで家族の負担を少しでも減らすことができます。
3つ目の目的は、ご自身の人生にビジョンを考える時間を得るということです。
死生観という言葉がありますが、生まれた瞬間、誰でも死に向かって生きていることは避けては通れないことです。
生前整理をおこない、財産の棚卸をすることで、不要な財産を売却され、老後の人生や生き方を充実させることができる 機会になります。
また、自身の大切な人を思い返し、その人との日頃の関係性について見つめ直すことができたり、今を生きることの活力にさえ 変わることがあります。
たとえ、元気であったり、若い世代の方であっても、人生の残りのおよその時間をイメージすることで人生のビジョンを考える 機会を得ることができます。
生前整理を行うタイミングは体力や気力の充実している動けるうちに進めておくことをお勧めします。
お子様がご結婚され、離れた場所での生活が始まるタイミングや大学を卒業されるタイミング、またはUターン等でご家族が戻って きて同居するタイミングなどで行うことが一般的です。
生前整理を毎日頭の中に入れながら過ごすことはありませんので、ふと、片付けしようとか、要らない物は処分しようとか、そう感じたときがベストなタイミングと言えます。
なぜなら、感じたということは、少なからず、感じた理由や背景が存在していると言いかえることが出来るからです。
また、介護施設(老人ホーム等)へ入居のタイミングやご病気等で長期入院される際にご家族から依頼されて行う生前整理も多い ようですが、ご自身が立ち会える生前整理こそ、ご自身の意思が尊重され、反映されるため、良い生前整理であると思います。
生前整理と遺品整理の違い
●生前整理・・・亡くなる前に、本人や家族が身の回りの持ち物を整理すること
●遺品整理・・・亡くなった後に、家族が残した物を片付けること
つまり、簡単にまとめると、亡くなる前か後かの違いということになります。
整理するものは貴重品や思い出の写真、家財(家具や家電製品や寝具や衣類など)、使われない不用品などが主な対象です。もちろん、土地や建物、証券や美術品なども相続の対象となりますので、整理が必要です。
それぞれの特徴をまとめてみました。
●生前整理
・整理の対象品の持ち主がいるので、整理の進め方に迷わない
・亡くなった後の家族の負担を自らの意思で軽減させることができる
・財産の棚卸と気持ちの整理ができるので、相続時のトラブルを減らすことができる
・生前贈与が必要かどうかが分かり、早くから行動できる
●遺品整理
・整理の対象品の持ち主が不在となり、どのように整理して良いのか迷う
・残された遺族(家族や大切な人)に大きな負担(時間・コスト・精神的)が生じる
・遺産(遺品)の分割協議時に家族間でトラブルに発展することがある
※遺産相続で家族間でもめて裁判に至った事例は平成26年度12,577件もあり、その後の増加しているという事実があります。
上記をご覧いただければ、生前整理を早めに進めておくことの重要性は少しでも感じていただけたのではないでしょうか。
生前整理のやり方とコツ
生前整理に限らず、物事を進める上で効率的な方法、コツは、手順(進め方)を事前に理解しておくことです。
《生前整理の流れ》
①書類の仕分け・整理
重要な書類や想い入れのある写真やアルバム等が整理できていないのであれば、整理して、一か所に保管しなおします。
ここで言う重要な書類とは、市役所や年金事務所に届けるような書類や生命保険、賃貸住宅契約書、土地の権利書などを指します。
想い入れのある写真や物は自身が亡くなった際、遺族に棺に入れて貰えるように依頼しておいても良いでしょう。
②貴重品の売却・整理・処分
タンスや押し入れを整理していると出てくる貴重品としては、銀行の通帳やキャッシュカード、印鑑の他に宝飾品や株券などがあります。
相場が変動する金プラチナ製品や株券などは、残された家族が価値を正しく認識できるかどうかは判りかねてしまいます。
価値が分からずに放置されたままになってしまっては、残した意味が薄れてしまいますので、ご自身の老後の生活を充実される為の資金として売却を選択される方が増えています。
これは、金銭に関わるものを残すこと自体、残された家族間のトラブルにつながりやすいということが影響していると思います。
もちろん、どのタイミングで売却するべきかは自身の判断となりますが、不安な方は買取や鑑定のプロにアドバイスを受けてみましょう。
③家財の片付け
部屋の片付けを行うことで、万が一、亡くなった後の家族の負担を軽減させることができるほか、生前の生活も快適に過ごすことができる為です。
使っている物、使っていない物に仕分けしていくのですが、統計上、1年以上使われていない物はその後も使われないことが多いです。
1年以上使われていない物を中心に、売却できるものは売却、売却できないものは処分しておきましょう。
④スマートフォンやパソコンなどの整理
スマートフォンやパソコン内に入っている写真や連絡先、各種WEBサイトのログイン情報などです。
最近では、スマートフォン内にキャッシュレス決済アプリやインターネットバンキングの設定を記憶させているため、IDやPASSなどの記録が亡くなった際に残っておらず、家族の手間が増えている傾向があります。
ログイン情報、パスコード、暗証番号などは適当な紙に残しておくのではなく、きちんとエンディングノートに記載して信頼できる人に存在を教えておく必要があります。
※注意点:ログイン情報がわからず、FXや株式投資を放っておいて多大な損失となるケースもありますので、注意しましょう。
⑤エンディングノートを作る
不要な物を片っ端から処分していくことも良いと思いますが、片付けや掃除とは異なり、生前整理をすすめる上で大事なことは、ご自身のことを書いた1冊のノートを作成することです。
どんな形式のノートでも構いませんが、生前整理をスムーズに進めるためには、記帳しやすく、書くべき項目などの見出しのあるエンディングノートが市販されていますので、ご自身の好みで選択されれば良いと思います。
お葬式、葬儀関係をあらかじめ見積り依頼していればその記載をしておくと、残された方が一番つらい時期に大変な思いをすることが少なくなります。
※弊社が運営している生前整理セミナーに参加された方には無料で配布しています。
《エンディングノートを作成する上でのポイント》
遺言書とは異なり、少しカジュアルな形式ですが、生前整理を初めて行う方には適しているツールです。
マイナンバーや通帳の番号や使用されているクレジットカードやキャッシュカード、親しい友人やご親族の方の連絡先などを書く欄や財産目録(銀行残高、土地・不動産、有価証券、仮想通貨など)なども記載しておくことが重要です。
また、万が一、借金がある場合は、財産リスト欄に借金も明記されることをお勧めします。
記載がない借金があると相続の際にトラブルの元になりますので、恥ずかしさや見栄を取り払い書いておきましょう。
※金銭に関係する内容を記載するものですので、保管場所は人目につくような場所には置かず、ノートを保管する場所は、親しい 人にだけ教えておく事をお勧めいたします。
また、家系図を書く形式のエンディングノートも多いのですが、意外と初めて書く方も多い事に気づきます。
法定相続人は誰なのか、何となく知っておくのではなく、親子や兄弟との関係についても再認識する機会になりますので、きちんと家系図も書いて整理してみましょう。
エンディングノートや遺書は生前にしか書く事はできないものです。
財産や気持ちを整理することで、本当に必要なモノと不要なモノとが区別できてとてもスッキリすることができます。
のこす土地や財産や思い出などの整理、処分や分配方法をできる限り記載しておくことで、万が一の際にのこされた家族はストレスなく、整理することが可能です。
選べる買取システム
3つの買取方法をご用意しております。
お客様のライフスタイルに合わせた買取方法をご選択ください。
生前整理を行う際の注意点
ここまで、生前整理の必要性や流れについて記載させていただいて参りました。次は注意するべきポイントです。
《生前整理を行う際の注意点》
●価値の高い物を譲渡するなら生前に行うこと
あなたが亡くなった後、残された家族の間では、残された財産や貴重品の相続について必ず話題になります。
・故人の宝石が箱が出てきたけれど、中身が無い物が多い・・・。
・身に着けていた指輪や時計が無くなっている・・・。
のこされた家族の間では誰がいつ持っていったのだろうか?と犯人捜しを始めることさえ起きる可能性があります。
そのため、価値の高い物をお持ちで誰かに引き継いで欲しいと思われるのであれば、元気なうちに自身で決めた相手に手渡すことをお勧めしています。
もし、プレゼントをする相手がいないと思われたり、特定の人にプレゼントするとトラブルになりそう、という場合は、現金に変えてから、お小遣いとして配布することも良いでしょう。
仮に亡くなったご主人からいただいた思い出の品だったとしても、自身が亡くなり、エンディングノートに物と物に対する想いを記載していなければ、その思いや価値は子供や孫に引き継がれることはないのです。
残すも良し、売却して金銭に変えることで分け合うのも良し、ご自身で故人との想い出を辿る旅をしてみるのも良いでしょう。
売却を生前に選択されることで、残された家族が遺品整理業者に片付けを依頼した際、貴重品をゴミとして処分してしまったり、従業員の方が勝手に持ち出してしまったりするリスクも回避することができます。
お手持ちの物で今でも価値がある物なのかどうか自身で判断が付かない場合は、信頼できるリユースショップに相談してみると良いでしょう。貴金属だけでなく、古いカメラや時計、茶道具や絵画など、思わぬ高額の値がつくものもあります。
生前整理の費用と相場
また、遺品整理と同様に自宅にある家財一式をすべて処分する生前整理と生前整理のアドバイスを受けるアドバイザーへの相談料が存在します。
アドバイスのみのご依頼であれば、1時間あたり5,000円~10,000円/人が相場です。
間取り別の概算相場を開示されている業者もありますので、料金の比較をしてみると良いでしょう。また、サービスの品質や範囲の違いもある為、詳しく聞いてみる事をお勧めいたします。
《料金の目安》
1K 35,000円〜
1DK 50,000円〜
1LDK 80,000円〜
2DK 100,000円〜
2LDK 130,000円〜
3DK 160,000円〜
3LDK 180,000円〜
4LDK 220,000円〜
※処分する家財の量やお部屋の状況(エレベーターの有無やタワーマンションなど)によって変動しているようです。
※特殊清掃の場合は亡くなってからの時期と亡くなった場所によって料金が異なる場合が多いです。
生前整理は誰に相談すればいい?
ご自身の意思ですべて決めることができますので、ご自身がどこまで自身で進めるかによって相談する相手が変わってきます。
●ご自身で生前整理を進める場合
ご自身で重要書類や貴重品の整理を進めたり、片付けができるのであれば大半のことは自身で進めることができます。
ただし、遺書(遺言書)の作成については、法的効力として認められるものを準備する必要がありますので、専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
遺言書作成は士業の方が行うケースが多いです。それぞれ専門分野が異なったりしている為、自身の財産に合わせて依頼することが望ましいです。
弊社では、不動産が含まれる遺言書を作成する場合には司法書士、相続税申告が必要な場合は税理士、相続時にトラブルが想定される関係性がある場合には弁護士、財産が大きくなく、費用を考えるのであれば行政書士の先生を紹介させていただくことが多いです。
※そもそも相談されたい内容を整理されたい場合は相続診断士が在籍する弊社にご相談ください。
●身の回りに手伝ってくれる家族がいない場合
お近くに家族がいらっしゃらず、自身では生前整理を進められない、体力や足腰の悪い方からの問い合わせをいただくことがございます。
遺書の作成については前記の通りですが、家財の仕分けや処分などについては、大きく2つの業者に相談いただくことをおすすめいたします。
・貴重品や有価物(絵画・宝飾品・時計・カメラ・楽器・着物・オーディオなど)の鑑定や買取を行ってくれる業者
・不要な家財(家具や家電製品など)を回収・処分してくれる業者
貴重品や不要品が出てきたけれど、そもそも価値があるのかないのか判らない物がある場合は信頼できる買取業者を呼ぶことが望ましいです。
その理由としては、不用品の回収・処分をしてくれる業者の中で絵画や骨董品から着物に至るまで「目利き」が出来る企業は本当に少ない為です。
そのため、鑑定や査定ができる業者に足を運ぶか、自宅にお呼びいただき、査定価格を確認の上でご売却いただいてから、不用品回収の業者に依頼することが良いでしょう。
売却したお金で不要な家財の処分費用を捻出できるケースもありますので、不要品の回収業者にワンストップで依頼してしまうことは出来る限り避けた方が望ましいです。
※参考までに、弊社では相続診断士や生前整理アドバイザーも在籍、生前整理のアドバイスはもちろん、貴重品の仕分けや鑑定・買取を行っております。また、優良な不用品回収業者の選定や手配および価格交渉に至るまで、ワンストップでお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
少しでも生前整理について理解が深まったのであれば幸いです。
私も相続診断士という資格を取得し、相続に関するトラブルの事例や法令などから学ばさせていただいていますが、残される家族がトラブルにならない遺品整理が大切であること、その為には生前整理や家財整理・片付けなどを進めておくことが重要だと思っています。
《まとめ》
・体が元気なうちに進める
・思い立った時がベストタイミング
・残される家族のことを考える
・スッキリして残りの人生を自ら楽しむ
ですね。何度も書かせていただきましたが、生前整理は自身が生きているうちに自身の意思を反映して行うものです。
とはいえ、1人では中々進めることができないと思います。
身近に相談出来る人を家族でも良いですし、専門家でも良いですが、1人でも多く持つことができれば、死後の遺品整理を見据えた生前整理は少しずつ進めることはできそうですよね。
ぜひ、生前整理を進めてみてください。
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